花束は、やがて病院へと運ばれていきました。
白い廊下を抜け、病室のドアが静かに開きます。
「お疲れさま、今日はいい日だったよ。」
旦那さんは少し照れたように笑いながら、奥さんのベッドの横に花束を置きました。
その横には、ふわふわの小さなクマのぬいぐるみ。
「赤ちゃんにも、はじめましてのプレゼントだよ。」
奥さんは思わずクマを抱きしめ、花束に顔を近づけました。
──ふわっと広がる、やさしい香り。
その香りに包まれた瞬間、なんだか胸の奥まで温かくなっていきます。
廊下から覗いていた看護師さんが微笑んで言いました。
「素敵なご家族になりそうですね。」
その一言に、奥さんの目がふっと潤みました。
「……そうだといいんですけど。私なんかがちゃんとしたママになれるのかなって、少し不安で。」
思わず、心の中の弱い部分を口にしてしまいます。
その様子を、病室の窓辺からこっそり見ていたハニャンは胸がきゅっとしました。
(……大丈夫だよ。ハニャンが応援してあげる。)
そう小さくつぶやくと、くぅちゃんをぎゅっと抱きしめ、
「よしのこぽんぽん、なでぽよ〜ん……」
と、そっと呪文を唱えました。
「ん?ハニャン、よしのこぽんぽん、なでぽよ〜んってなんだい?」
くぅちゃんが首をかしげます。
「これはね、ハニャンが考えたオリジナルの癒しの呪文なの!聞くだけでふわっと心が軽くなるのだよ〜」
胸を張るハニャンに、くぅちゃんは心の中で
(う、うん……癒しの呪文とはちょっと違うけど……まぁ、ハニャンのやりたいようにさせておくか。)
と、優しく見守るのでした。
そしてその日から、ハニャンは何日も何日も、奥さんのためにその呪文を懸命に唱え続けたのです。
【ハニャンが見せた優しさと癒し】
奥さんの小さな不安に気づき、何日もかけて癒そうと決めたハニャンのまっすぐな想い。
【ハニャンが学んだ優しさと癒し】
花束やぬいぐるみは、モノ以上に「想い」を届けられること。そして、その想いが人の心を開くきっかけになること。
K.ハニョンのあとがき
花束も、ぬいぐるみも、それを選んだ人の気持ちが込められています。
誰かを思って選んだ「モノ」には、不思議と心をあたためる力がありますよね。
今日も、あなたが誰かに届けた想いが、どこかで優しさの芽を育てているかもしれません。
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