天界の雲の上。
出産を控えた奥さんの病室での出来事を見守っていたハニャンは、日ごとにその顔を曇らせていました。
「くぅちゃん…もうすぐ赤ちゃんが生まれるのに、奥さんがずっと心配そうなんだもん。ハニャン、早くなんとかしてあげたい!」
その日から、ハニャンは自分なりの癒しの呪文を、何度も何度も唱え続けるようになりました。
「よしのこぽんぽん、なでぽよ〜ん…よしのこぽんぽん、なでぽよ〜ん…」
ある朝、目を覚ましたくぅちゃんは、まだ呪文を唱えているハニャンを見つけました。
「ハニャン…もしかして徹夜でずっとその呪文を唱えてたのか?」
「うん!だって赤ちゃんが生まれてくる前に、奥さんを笑顔にしてあげたいもん!ハニャンがんびるんだもん!」
「気持ちはわかるけど、ずっと続けたらハニャンの身体がもたないよ」
「いいの!ハニャンがんびるの!」
昼間もウトウトしながら呪文を繰り返すハニャン。
その小さな背中を見ながら、くぅちゃんは心の中でつぶやきました。
『まったく…しょうがない子だなぁ』
そして夜。
ついにハニャンは力尽きて、すやすやと眠りに落ちました。
くぅちゃんはそっと奥さんの夢の中へ入っていきます。
夢の中。
奥さんは白い光に包まれた花畑の中に立っていました。
そこへ、やわらかな声が響きます。
「お前の心配する気持ちも、不安も…全部わかっているよ」
奥さんはハッとして振り向きます。
そこには、やさしい笑みを浮かべたラファエルが立っていました。
「いいか、人間界では“子は親を選べない”と言って“親ガチャ”などという言葉を使っているようだが、それは間違いだ。
子どもは皆、母親を自分で選んでこの世に生を受ける。
生まれる前は皆ちいさな光のつぶであり、天界から神とともに母親となる者を見定め、
『あの人がいい!あの人にお母さんになってほしい!』と、自ら選んで母親のお腹に入るのだ」
「つまり、お前は子に選ばれて母親となるのだ。
光という存在が、母親として務まらぬ者を選ぶことはないだろう。
子は、お前の子として生まれたくて生まれてくる。
目を覚ましても、それだけは忘れぬがよい」
奥さんは夢の中で涙をこぼしながら、ラファエルの言葉に聞き入っていました。
翌朝。
旦那さんが持ってきた花束の横に置かれた、小さなクマのぬいぐるみ。
奥さんがそっと抱きしめると、まるで本物の赤ちゃんを抱いているかのような温かいぬくもりと、やわらかな重みが胸に広がります。
不思議と、母性が静かに芽生えていく感覚がありました。
「ママになるの、楽しみだな。ありがとう、、天使さん、、」
その様子をこっそり見ていたハニャンは、満面の笑み。
「やった!ハニャンの呪文が届いたんだ!」
横でくぅちゃんは「…まぁ、そういうことにしとこうか」と小さく笑いました。
【ハニャンが見せた優しさと癒し】
奥さんのために何日も呪文を唱え続け、全力で想いを届けようとした。
【ハニャンが学んだ優しさと癒し】
優しさは“想いの強さ”だけでなく、相手の心に安心を届ける形として受け取られて初めて力になることを知った。
🌸このお話がちょっとでも心に響いたら、Instagramでもハニャンの物語を覗きにきてね。
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